オーバーホール作業内容

 基本的に、現在入手が容易な部品を使用します。生産当時の部品と現在入手出来る部品では、同等部品でも性能が異なります。その為、製品の劣化程度により、通常のオーバーホール(部品交換・再半田付け等)のみでは本来の性能を発揮しない場合が稀にあります。
 その場合には、オーバーホール交換対象部品以外の部品交換、機構部品の加工や配線・回路パターンの最適化及び部品の定数変更等の追加作業を行います。

 外装のクリーニングは必要最小限に留めます。(埃を取り除く程度)
 劣化が進行している可能性が有る塗装や文字の変色、剥がれ、変質が発生した場合、補修部品の入手や修復が極めて困難で、入手出来たとしても高価である事から、お客様にご迷惑をお掛けしないようにする為です。

オーバーホール基本作業内容

Technics(テクニクス)製品全般

 電解コンデンサ全数交換

 電解コンデンサは、電子部品の中で一番寿命が短いとされています。
 経年劣化による容量抜けや液漏れによるリード線・回路基板の損傷等、出来れば使用したくないデバイスではありますが、小型で容量を大きく出来る為に、大抵の電子機器に使用されています。
 通常は周囲温度85℃で1000時間の寿命を持つ部品が使用されています。
 生産後、半世紀を経た電子機器の電解コンデンサは寿命を迎えていますので、全数交換する事がセオリーと考えます。
 交換する部品は、105℃、1000時間以上の耐久性が有る物を使用します。また、耐圧は純正よりも1ランク以上高い物を使用します。6.3V品であれば16V品、16V品であれば25V品という具合です。
 これは、5Vラインに6.3V品、12Vラインに16V品を使用している場合に、容量抜けや液漏れが発生している率が高く、少しでも製品の信頼性を高める為の私なりの工夫です。また、同じ容量で耐圧が異なる部品が使用されている場合は、物理的に問題が無ければ一番高い耐圧の物に揃える場合も有ります。
 また、本製品はオーディオ機器ではありますが、オーディオ信号が流れる回路は有りませんので、制御機器として認識しています。その為、オーディオ用と銘打っている部品は使用しません。
 高分子電解コンデンサは、基本的にフィルムコンデンサに置き換えます。
 最近、10uF以下の製品が入手困難になっています。代替品として積層フィルムコンデンサを使用する場合が有ります。その影響は、今現在確認されていません。

フィルムコンデンサ全数交換

 フィルムコンデンサは経年劣化のスピードがかなり遅く、他のオーバーホール記事には交換事例が見当たりません。
 経験上ですが、松下電器製のECQMシリーズは劣化している物が多く、このコンデンサを交換する事で、不具合が無くなった事例が相当数有ります。
 容量は変化が殆ど有りませんが、ESRが周波数が高くなると悪化している個体が多く見受けられます。
 新品時の数値がどの程度なのか今では確認できませんが、ばらつきとは考えられない程の差異が認められます。
 今後の状況がどうなるか予測できませんので、このシリーズのフィルムコンデンサは全数交換を行います。

マイクロスイッチ、タクタイルスイッチ全数交換 

 微電流が流れる接点ですから、自浄作用は見込めませんので、接触不良の発生は抑えられません。また、分解も出来ませんので、交換以外に不具合を解消する方法は有りません。
 形状や接点数を考慮して、同等の部品を使用します。

各回路基板半田付け全箇所吸い取り、再半田付け

 既存の劣化した半田の上から新しい半田を乗せる盛り半田は、根本的な半田付け修正ではありません。劣化した異種半田成分が大量に残り、急速に半田割れが発生する可能性が高くなります。
 既存の半田を可能な限り吸い取り、再度半田付けを行います。
 部品を機械挿入している回路基板では、リードフォーミングされて部品のリード線で機械的に固定され、半田で電気的に繋がっていますので、半田付けの不具合は発生しにくいですが
手作業で部品挿入され、そのまま半田槽で半田付けされた回路基板では、機械的にも電気的にも半田で固定されていますので、少しの振動や加重で半田抜けが発生しやすくなります。
例えば、この様な回路基板ですね。

 左側が作業前、右側が作業後です。作業前は部品が基板から浮いています。稀にですが、浮いている部分で半田割れが発生している場合が有ります。
 この様な部品実装がされている場合、半田を吸い取る時に部品を基板から外し、リード線をクリーニング後フォーミングして実装します。その際には、基板裏側でリード線を曲げて、リード線で機械的に固定した後、半田付けを行います。稀にリード線が短く、実装が不可能な場合も有りますが、新品部品に置き換えます。この場合の部品費用は、基本的にお客様には請求しません。
 手間はかかりますが、少しでも半田付けでの不具合を無くしたいとの思いです。

各回路基板クリーニング

 長年の埃や汚れを落とすだけでは無く、残留フラックスを洗い流す為にクリーニングを行います。
 残留フラックスの中には、空気中の水分を吸収して抵抗を持って導通する物が有ります。そうなった場合、本来の回路には無い回路が形成され、最悪の場合過電流が流れて、動作の不具合や部品の破壊を招きます。
 各部品のリード線にチューブをかぶせた状態で半田付けが行われ、リード線とチューブの隙間に残留フラックスが存在している場合は、リード線からチューブを取り外し、リード線のクリーニングを行います。リード線の腐食が酷い場合には、部品交換を行います。
 回路基板が綺麗になり、不具合の発生頻度の激減が期待できます。

機構部分解清掃、グリスアップ、注油

 機構部分を可能な限り分解し、劣化した油脂類を洗い流し、動作に問題となる傷を修復します。傷は必ず凸凹が有ります。磨いて傷を取るのですが、嵌め合い部分は凸の部分だけ磨いて凹の部分は残します。クリアランスを適正に保つ為です。
 適切な油脂類を用いて組み上げた後、動作に問題が無い事を確認します。

機械・電気調整

 電子部品を交換しますので、どうしても調整が必要になります。
 組み上げた後仮調整を行い、半日程度動作確認運転を行った後、本調整を行います。温度特性が悪化していた個体は、この時に確認を行います。

最終動作確認

 半日確認運転、半日電源OFFを2回以上行い、最終動作確認を行います。
 この作業により、オーバーホール後の不具合を見つける事が出来る可能性が高くなります。

上記以外の追加作業

 ・SP-10mk3・SP-15
   回路基板上のコネクタ全数交換
 ・SP-10mk2
   サンプリングホールド回路FET全数交換

その他

 オーバーホールに使用する部品は、基本的に現在新品が入手可能な部品を使用します。

 メーカーカスタムICの不具合が発生している場合は、新品入手不可部品ですので、部品費は時価とさせて頂きます。
 尚、SP-10mk3、SP-15に使用されているピッチコントロールICにつきましては、ピッチコントロール機能をOFFにする事で部品交換を行わずに通常使用(33rpm、45rpm)が出来るカスタムが可能です。
 製品の価値が下がりますが、SPレコードを聴かれない又はピッチコントロールが不要なオーナー様にはお勧めです。

 ラッピング配線が施されている箇所は、再ラッピング時の接触不良を避ける為に、はんだ付け用ピンに置き換えます。再ラッピング後、半田を流している場合が有りますが、接触不良の原因と成る可能性が有りますので、確実に接続が可能な手法を取り入れています。

 SP-10とSP-10mk2に使用されているストロボ用ネオン管は入手が非常に難しくなっていますので、ストロボが不点灯の場合にはLEDに置き換えます。色や見え方の変化が有りますので、予めご了承をお願いします。

DENON、KENWOOD

 基本的にはTechnics(テクニクス)製品全般に準じます
 DENON製品は半導体の劣化が進んでいる場合が多く発生していますので、半導体の全数交換が必要な場合が多々有ります
 半導体は純正品を使用する事がベストなのですが、入手できるのはデットストック品のみです。
 デットストック品を使用して全く性能が出なかったり、耐久性に問題が有ったりと信頼性に欠ける懸念が有りますので、現在入手できる代替品に交換する可能性が高くなります。予めご了承をお願いします。

Garrard (ガラード) Model301 Model401

 分解清掃
 グリスアップ・注油
 スピンドルオイル漏れ対策
 組み立て・機械調整
 スイッチサプレッサーユニット交換
 ゴム部品全数交換(アイドラ除く)
 12時間×2日以上の試験運転後、動作確認 

 オーバーホールに使用する部品は、Technics製品と同様に現在入手できる補修部品を使用します。
 オリジナル部品は入手性が非常に悪く、異常な程高価であると共に信頼性に欠ける物が多く出回っている為、基本的に使用しません。
 劣化具合により、アイドラやモーター軸受けの交換が必須になる可能性が有ります。

 機械的に成立している製品ですので、分解可能な所まで分解して、永年の汚れ(外装部を除く)や劣化している油脂類を洗い流します。また、金属部品には防錆の為、シリコーンを塗布します。(速乾性シリコーンスプレー使用)
 新しい油脂類を使用して組み立て、規定の回転数に収まっている事やゴロゴロ音が殆ど発生していない事を確認します。
 構造上、スピンドルやモーターの潤滑油は漏れ出してしまいます。スピンドルへの注油は比較的簡単にお客様にて実施できますが、モーターの軸受けへの注油は、モーターの脱着や分解と調整が必要ですので、簡単には実施できません。実際、モーター軸受けの潤滑油が完全に流れ出して、ドライの状態で使用されている製品が非常に多く見受けられます。この様な場合、軸受けの偏摩耗が発生してモーターの振動が大きくなり、振動がアイドラからプラッタへ伝わって、再生音を濁す原因になっています。この状態では性能が発揮されていませんので、モーター軸受けの交換を行います。
 シャーシの歪が発生している場合、設備の関係上、基本的に元に戻す作業は行いません。性能上に問題が残る場合は、スペーサーの使用や研磨を行い、機構上の辻褄を合わせます。
 歪が大きく辻褄合わせが出来ない場合は、作業をお断りする場合も有ります。

オーバーホール基本費用

Technics(テクニクス)

SP-10 ¥40,000~
SP-10mk2 ¥55,000~
SP-10mk3 ¥75,000~
SP-15 ¥65,000~

Garrad(ガラード)

Model301 ¥35,000~
Model401(初期) ¥40,000~
Model401(後期) ¥35,000~
オプション
 モーター軸受け交換 ¥35,000
 アイドラ交換 ¥23,000
 スピンドルスラストパッド交換 ¥13,000

DENON、TRIO/KENWOOD

お預かり後見積もりとさせて頂きます

 上記金額は基本金額です。製品の状態及び入手経路(オークション、個人売買等)によっては追加費用が発生する場合が有ります。
 見積費用は発生しませんが、運送費のみお客様にご負担をお願いします。

作業の流れ

 最初に「連絡先」からご相談ください。

 当店の作業内容や費用にご納得頂き、作業依頼を承った後、製品を送り頂くタイミングをお知らせしますので、しっかりと梱包を行なって頂いてお送り下さい。
 近郊にお住いの方は、お持ち込みも可能です。

 現品の状態確認後、送料を含めた見積金額をお知らせします。
 見積にご納得いただいた後、実作業に移ります。

 作業完了後、その旨の連絡を行います。作業費用は銀行振り込み(銀行名・口座番号は作業完了の連絡時にお知らせします)にてお願いします。その際の振込手数料は、申し訳ありませんがお客様のご負担とさせて頂きます。

 ご入金確認後発送します。発送が完了しましたら、運送会社と伝票番号(お客様問い合わせ番号)をお知らせします。
 ご入金確認後、発送までに3日程度必要な場合が有ります。

 万が一、初期不良が発生した場合には、送料は当店が負担いたします。
尚、「初期不良」は、当店にて交換した部品の不具合によって発生した場合のみとします。