ガラード301(Garrard Model301)とSME3009SⅡのシステムでお預かりです。

お客様ご指摘症状

 ・電源スイッチレバー動きが非常に悪い
 ・ハム音発生

入荷時確認症状

Garrard301

 ・電源スイッチが殆ど固着状態
 ・33rpmにて定速回転しない(遅い)
 ・アイドラ滑り発生
 ・アース線接続位置が不適格

SME3009

 ・ライダーウエイト固定部品が無い
 ・エラスティックカップリングラバー劣化

オーバーホール作業内容

Garrard301

通常オーバーホール作業内容

 ・ラバースリーブ交換
 ・アイソレーショングロメット交換
 ・ボルトラバー交換
 ・ブレーキパッド交換
 ・スイッチサプレッサーユニット交換
 ・分解清掃、クリーニング、グリスアップ

追加作業内容

 ・モーター軸受け交換
 ・アイドラ交換
 ・モータープーリ交換
 ・アース線接続位置変更及びキャビネット外へ引き出し

SME3009

 ・ライダーウエイト固定部品取り付け、アームに組み込み
 ・エラスティックカップリングラバー交換

考察

開梱時に、ちょっとしたトラブルが有りました。
梱包時にプラッタとターンテーブルシートを装着したままでしたので、ターンテーブルシートが飛び出していました。プラッタとスピンドルシャフトの勘合が強めでしたので、プラッタは外れていなかったのは幸運です。
また、モーター固定金具の締結もされていませんでした。

もっとびっくりしたのは、アームのライダーウエイトがアーム近くに落ちていた事です。

開梱してすぐの写真です。
ライダーウエイトが落ちている写真は、全体写真の一部をトリミングしています。

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開梱直後の様子
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アーム側に落ちているライダーウエイト

ライダーウエイトは、運送時のショックで外れたのか、元々固定部品が無くなっていたのかは、定かでは有りません。

プラッタを取り外したところ、アイドラを保持する金具を取り付けるネジが緩んでいて、アイドラが外れています。

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外れていたアイドラ

また、モーター支持フレームをシャーシに取り付けるネジも、完全に緩んでいます。

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緩んでいたネジ

分解時に判明したのですが、ネジの締結力にムラが有ります。
前回のメンテナンス時に、締め忘れが有ったのでしょうか?

Garrard301作業詳細

この個体は、以前にもメンテナンスを受けています。
ゴム部品の劣化があまり進んでいません。
その一部ですが、この様な状態です。

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ゴム部品の一部

お客様と相談の上、今回は全てのゴム部品を交換する事になりました。
以前のメンテナンス時に使用されたグリスが硬化し、各つまみの動きや摺動部の動きが悪くなっていました。
お客様ご指摘の電源スイッチも例外では無く、固着している状態でした。無理をして引き抜くと、ノブが破損する恐れが有りますので、シャフトに軽く衝撃を与えながら、少しづつ抜いています。
シャフトとボス両方を軽く研磨し、劣化して硬化したグリスを除去した後、新しいグリスを用いて組み立てています。

モーター軸受け交換

モーターの軸受けの油分が枯渇し、その状態で使用を続けた事で軸受けが偏摩耗し、モーター軸にも大きな傷が入っていました。
モーターを分解して取り出してすぐの軸の状態です。

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モーラーローター軸下側
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モーターローター軸上側

この状態で軸受けだけ交換しても、新しい軸受けの内部に傷を付けて、長期の使用には耐えられません。
キズを問題無いレベルまで研磨しています。

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モーターローター軸下側(研磨後)
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モーターローター軸上側(研磨後)

最終的には#10,000のラッピングフィルムで仕上げています。
完全な鏡面にすると、軸と軸受けがオイルで密着するのでしょうか、使用時にモーター本体の発熱がかなり多くなりますので、この程度で留めています。また、これ以上の仕上げは、当店の設備では非常に難しくなります。

交換する軸受けは、現在販売されている保守部品を使用しています。
Garrard301、401共に、軸や穴の仕上がり寸法のバラつきが大きく、販売時のままではクリアランスに問題が有ります。
今回も軸には通りますが、スムースに回転するクリアランスは確保されていませんでしたので、軸のキズ修復後、軸受けの穴を微調整しています。

プーリーに関するトラブル

全ての作業が終わり、最終的なチェック時に、設定回転数の違いによる速度調整ノブの定速回転になる位置の大きいズレが確認できました。
作業前は33rpmで速度調整+側MAXで回転数が低く、定速が出ていませんでしたので、それ以外の回転数はチェックしていませんでした。
モーターの軸受けにガタが大きく発生していましたので、軸受けを交換すれば、正常に戻ると考えていましたが、作業後でも33rpmでは速度調整ノブの一がMAX位置付近で定速回転になります。
他の回転数で試したところ、45rpmでは+側に2目盛り、78回展ではー側3目盛りの位置で定速回転になります。
プーリーに問題が有るかと思い、各回転数用の直径を測定しましたが、回転数との関係は保たれています。
回転数調整ノブをMAXにしても、通常の位置には来ていませんので、プーリーを交換する事にしました。
交換後、33rpmは通常の位置付近で定速回転するようになりましたが、他の回転数ではかなりー側になり、78rpmでは調整範囲外になってしまいました。
モーターの不具合を考えましたが、モーターは負荷が増えると、回転数は落ちますので、今回のトラブルとの関係は考えられません。
プラッタとアイドラが接触する面の寸法的な不具合が一番考えられますが、プラッタの交換は、費用的、時間的に妥当ではありませので、補修部品供給会社の方と相談し、現状打開策としてプーリーを研磨して、回転数を調整することにしました。
既設品はメッキが施されていますが、補修部品にはメッキが施されていませんので、問題は有りません。

既設の物、補修部品、補修部品を研磨して速度を適正化した物のプーリー直径を測定しました。

33 1/3rpm45rpm78rpm
既設6.345mm8.616mm14.948mm
補修部品6.505mm8.860mm15.415mm
調整研磨後6.470mm8.830mm15.310mm

測定は、Mitutoyo M327-25を使用し、周囲温度は20℃で行っています。
温度計は校正された高価なものでは無く、一般に安価で入手できる製品ですので、温度は20℃付近と考えるのが妥当かと思います。

計算して頂くとご理解いただけると思いますが、78rpmだけ研磨後の直径が割合的に小さくなっています。

この様な状況は初めてですので、この処置が最適なのかは疑問が残ります。ただ、今現在の当店での設備では、これが精一杯です。
この作業により、33rpm、45rpmは速度調整ノブの中央付近で、78rpmは-3目盛り付近で定速回転しています。

既設と研磨を終えたプーリーです。右側が研磨後のプーリーです。

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既設と研磨後のプーリー

その他

Garrard301 及び Garrard401によく有るパターンですが、電源供給端子と電源コードの接続が、コードの被覆を剥がした状態のまま、ネジ止めされています。

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電源コード接続部

特に大きな問題では無いのですが、コード芯線がほつれるとか部分的に断線する事が有ります。
新しい芯線を出して、丸端子をカシメて接続しています。

お客様のご指摘の中に、ハム音の発生が有ります。
ハム音は、接地電位の差やコネクタ類の接触不良で発生する事が多いと理解しています。
今回の個体は、スイッチサプレッサーユニットを取り付けるネジに接続されていました。
このネジ、シャーシの塗装されている場所に設けられていますので、塗料に邪魔をされてシャーシと電気的に接続されていません。また、この配線は、接地部に接続されています。
当店の設備では、ハム音は確認できませんでしたが、システムによってはハム音が出る可能性が高い状態です。
その様子です。

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接地線が取り付けられているネジ

この接地線を取り外し、モーターに取り付けられているラグに別途配線を行い、キャビネット外に引き出しています。

SME3009作業詳細

エラスティックカップリングラバーが経年劣化により機能していません。

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劣化したエラスティックカップリングラバー

補修部品が入手できますので、新品と交換しています。
劣化した部品と新品部品です。

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新旧エラスティックカップリングラバー

ライダーウエイトが本体から外れていました。支持する部品が無くなっていましたので、補修部品を取り付けています。
外れていたライダーウエイトです。

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外れていたライダーウエイト

交換部品一式

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Garrard 301 + SME3009システム オーバーホール交換部品

余談

モータープーリの運送で、一波乱(?)有りました。
補修部品を供給してくれている方に急遽注文・発送をお願いし、快く受けて頂いて、当日発送して頂きました。
通常であれば2~3日、遅くても4日あれば到着するのですが、6日目になっても到着しません。
事情を説明して、別ルートで再発送して頂き、2日目に到着しました。
運送会社名は伏せますが、急いでいる時にこのような到着遅延は困りますね。
未だに最初に発送して頂いた荷物の行方は分かっていません。
目下調査中です(2026年5月23日現在)

当システムの再生スペクトラム

このシステムの再生音に興味が有りましたので、手持ちのカートリッジとイコライザーアンプを接続して、テストレコードを再生して波形観測を行いました。
カートリッジはaudio-techica AT-VM95E/M、イコライザーアンプは、これもaudio-technica製で AT-PE030を使用しています。
また、テストレコードは株式会社 中電のCD-4005(SPEC 修正2018/5)を使用しています。
どちらも安価な製品ですので、参考程度にとどめて下さい。

20260521
イオライザーアンプのみスイッチON
20260521
1kHz再生時

どちらも20kHz付近と30kHz付近にピークが有りますが、これは作業机周辺に有るACアダプターのノイズです。取り外すのを忘れていました…